注目の投稿

廃墟の落書き

怖いコピペとして、以下のものがある。 俺が小学生の頃の話。 俺が住んでいた町には廃墟があった。 2階建てのアパートみたいな建物で、壁がコンクリートで出来ていた。 ガラスがほとんど割れていて、壁も汚れてボロボロだったから、 地元の人間でも、あまりこの場所に近づくことはなかったらしい。 ある日、俺は友人と肝試しをすることになって、この廃墟に行くことにした。 まだ昼ぐらいだったから、建物の2階まで上がって建物を探索した。 そしたら並んでいる扉のひとつに、文字が書いてあるものがあった。 友人と近づいて確認してみると、扉の前に「わたしは このさきの へやに いるよ」と書いてあった。 俺と友人は扉を開けて中に入り、先に進むことにした。 歩いていくと分かれ道に突き当たって、壁に「わたしは ひだりに いるよ」と書いてあった。 少し怖かったけれど、俺と友人はそのままひだりに進むことした。 すると両側に部屋があるところに突き当たって、壁に「あたまは ひだり からだは みぎ」 と書いてあった。 友人はこれを見た瞬間に、半狂乱になって逃げ出した。 でも俺はその場所にとどまって、勇気を出してみぎの部屋に行くことにした。 部屋に入り進んでいくと、突き当たりの壁に「わたしの からだは このしたにいるよ」 と書いてあった。 下を見ると、「ひだりの へやから わたしの あたまが きてるよ うしろ みないでね」。 俺は急いで、その部屋の窓から飛び降りて逃げた。 それからはもう、その場所には近づいていない。 自分はこのコピペを、単に廃墟に怖い落書きがあったという話だと思っていた。 しかし検索してみると、このコピペを「意味が分かると怖い話」(以下「意味怖」)として紹介しているページが多くある。 その「意味」とは、「最後の『ひだりの へやから わたしの あたまが きてるよ うしろ みないでね』は落書きではなく声である(この文のみ「書いてあった」と書かれていないため)」というものだ。 というわけで今回は、このコピペの起源と、本当に「意味怖」なのかを調べてみた。

人名・地名の違い(difference between Japanese and English)

『デルトラ・クエスト』は、オーストラリアの作家エミリー・ロッダ(Emily Rodda)が作った物語である。

言葉遊びやクイズも多く、日本語に訳しづらい部分もある。

そういうわけで、日本語版では固有名詞が変わっているものもあるのだ。

今回はそういった人名・地名を調べてみた。

なお、まとめたのは大きく名前が変わっているものに限り、大意が同じものは除いている(ex. 肉食い虫/Fleshbanes)。

また発音の違いが小さい場合は、日本人にも覚えやすい名前に変えた結果だと考えて、載せていない。




デルトラの書/The Belt of Deltora

ウィシック(Withick)の書いた本で、デルトラの建国の歴史や、王位継承のルール、そして王家の伝統の変遷などについて書かれている。

空色の表紙に金文字でタイトルが書かれている。

直訳するとベルトと本を混同してしまうため、このような訳になったと思われる。

なお日本語版挿絵では、副題としてThe Belt of Deltoraの名が確認できる。


アブラ、カタブラ/Brix, Snuff

家畜マドレットへの命令の言葉で、アブラ(Brix)が進め、カタブラ(Snuff)が止まれの意。

元が深い意味がない言葉だからか、日本人にもなじみのある呪文に変更されている。


チュルナイ、ネズヌク、クリーン・チュルナイ/Noradz, RA-Kacharz, Noradzeer

チュルナイ(Noradz)はオパールの領土にある都市名で、ネズヌク(RA-Kacharz)はそこの支配者、クリーン・チュルナイ(Noradzeer)はそこでの挨拶である。

英語版では、すべて別の言葉がつづまってできた造語となっている。

それぞれ、No ratsがNorads、Rat catchersがRA-Kacharz、No rats hereがNoradzeerの意味。

しかし日本語では、それとはっきりわからなくなっている。

おそらく日本語でやろうとすると、ネズナシとかネズトリとか、ネズイナとかになってしまい、真相がバレバレになってしまうからではないだろうか?


ライ/Reece


ネズヌクの主席の男性。

影の大王の手下だったが、処理穴(the Hole)において、恐ろしい最期を迎えることとなった。

名前が変わったのは、おそらく日本語だとリース村(Lees)と発音が全く同じになるため、それを避けるためだと思われる。

しかしその後、同作者により、『勇者ライと3つの扉』(The Three Doors)が出版されたため、ちょっとややこしくなってしまった。


ジョーカー/Doom

レジスタンスのリーダーにして、影の競技場から最初に逃げ出した超人でもある。

顔に傷があるのが特徴。

影の競技場で大けがをして、それ以前の記憶を失った。

ジョーカー(Doom)というのは、命の恩人の名前をもらったもので、本名ではない。

『デルトラ・クエスト オフィシャル ガイドブック』(石崎洋司、2004)によれば、Doomの意味(運命、破滅)を生かすために、ジョーカーという和名にしたらしい。




ルーカス、スカール/Steven, Nevets

レジスタンスに協力している行商人。

母親は、女王バチのアップルドリンク(Queen Bee Cider)を作っている果樹園の老婆。

金髪のルーカス(Steven)が弟で、褐色の髪の巨人スカール(Nevets)が兄。

普段スカールはルーカスの中に入っているので姿が見えないが、弟やその友人に危機が迫ると姿を現す。

弟の名前を逆から読むと兄の名に、兄の名前を逆から読むと弟の名になるという言葉遊びの強い名前であるため、日本語版では名前が変わった。


チェリー/Twig

リスメア競技大会での、リーフの偽名。

直前にブッシュタウン(Bushtown)出身だという嘘をついており、そこから発想した名前だと思われる(Bush:灌木、Twig:小枝)。

しかし、Twigというのでは日本人に分かりづらい。

そこで日本人にも分かりやすく、かつ似合わない偽名として、チェリーが選ばれたのだろう。


大いなる力/Hive

うごめく砂(Shifting Sands)に潜む怪物。

金属や骨など、風化しにくいものを集めて巣を作る。

日本語版ではハチを操る謎の意志のように読めるが、英語版では(英語が苦手なのでいまいち自信がないが)ハチの巣そのものであるようだ。


イワン、ザラ/Gren, Rabin

トル川にいた盗賊で、デイン(Dain)を影の憲兵(Grey Guard)に引き渡そうとしていた。

イワン(Gren)が男で、ザラ(Rabin)が女である。

なぜ名前が違うのか、全く分からない。


ウヌボレ、ワルヂエ、シット、ヨクバリ/ Pride, Envy, Hate, Greed

いましめの谷(Valley of the Lost)の番人が飼っているペットたち。

彼らの名前はクイズの題材になっているため、どの名がどの名の翻訳とも言い難い。


ヤーン/Rhans

デインの母の名前。

日本語版も英語版も、ある人を連想させる名前になっている。

しかしこの名前、どういう発音をするんだろうか?



ベタクサ村/Withick Mire

レジスタンスの西の隠れ家。

ごみ溜めのような村であるが、それゆえに影の大王の監視の目も届かない。

ウィシック(Withick)が昔この村に住んでいたため、そういう名前になったという。

日本語版ではMireの意味(ぬかるみ、湿原)を優先したのか、ウィシックの名前が訳出されていない。


骸骨山/Os-Mine Hills

トパーズの領土にある山で、地底に続く洞窟がある。

トパーズの竜が眠っていた場所でもある。

昔ここに住んでいたベン・オズマイン(Ben Os-Mine)の名前から、山の名前が付けられた。

骸骨山という名前はおそらく、Osに骨の意味があるために考え出された和訳だと思われる。

ただ、人名が由来という事実が明かされたのは、『デルトラ王国冒険記』(Tales of Deltora)が初めてなので、骸骨山となるのは仕方のないことだと思う。


ダーク/The Fear

秘密の海(secret sea)のうすあかり(The Glimmer)に住む怪物。

年に一度生け贄を要求していた。

いかにも怖そうな名前にしようということで、こういう名前になったのだろう。

闇の中の闇(The Dark)と被っているので、別の名前のほうがよかったと思う。


改造人間/Wild Ones

影の王国の国境付近に広がる荒野、死の荒れ野(Dead Plain)に住む奇怪な姿をした生き物。

元は人間だったのだが、影の大王に改造されてこんな姿になってしまった。

理性も消されてしまったようで、リーフたちにも問答無用で襲いかかってきた。

設定といい和名といい、初代仮面ライダーを彷彿とさせる。

よく考えると、この人たちは奴隷解放後も影の王国に取り残されているわけで、かなり悲惨な人生を送っているといえる。


忘れじの石/Soul-stone

常に色を変える石で、記憶をとどめておく力があるらしい。

なお、変わる色はすべてデルトラの七つの宝石の色である。

秘密の海でとれる石のようだ。

日本語版のほうが、機能が分かりやすい名前になっている。


金貸しジャック/Laughing Jack

影の大王の手下の高利貸し。

自分の家族でさえ平然と手にかけようとした外道だったが、最後は自業自得の末路を迎えた。

直訳すると、「笑顔のジャック」とか「にやにやジャック」とかになってしまい、しまりがなくなるために、こういう和名になったのだろうか。

なお、ジャックはきょうだいと精神的にリンクしている。

彼のきょうだいたちはそれを利用して、ジャックのことを見張っていた。


がぶのみの滝/The Funnel

ラピスラズリの領土にある大瀑布。

滝つぼが漏斗状になっていることから、The Funnelというようだ。

日本語版は意訳だが、センスがいい名前だと思う。


ファドレラ/Bede

仮面一座の座長ベス(Bess)の一人息子で、歌がとてもうまい。

日本語版も英語版も、名前が音階になっている(Bedeを固定ドでいうと、シミレミ)。

女たらしの嫌な奴だったが、マリエッタ(Mariette)のおかげで真実の愛を知ったらしい。

母やクリステン(Kirsten)の末路をどう思ったのか、気になるところだ。


眠れる砂丘/Dreaming Dunes

アメジストの領土にある砂丘で、アメジストの竜が眠っていた。

夢の泉(Dreaming Spring)と被るために、こういう名前になったのだろう。


ベリタス、ホープ、フォース、フォーチュン、フィデリティー、オナー、ジョイ/Veritas, Hopian, Forta, Fortuna, Fidelis, Honora, Joyeu

生き残りの竜たち。

どの宝石に対応した竜なのかまとめてみると、次のようになる。
  • ベリタス(Veritas):アメジスト(真実/truth)
  • ホープ(Hopian):オパール(希望/hope)
  • フォース(Forta):ダイアモンド(力/strength)
  • フォーチュン(Fortuna):ラピスラズリ(幸運/fortune)
  • フィデリティー(Fidelis):トパーズ(誠実/faithfulness)
  • オナー(Honora):エメラルド(名誉/honour)
  • ジョイ(Joyeu):ルビー(幸福/happiness)の竜。
察するに、どの竜が何を象徴しているかが分かりやすくなるように、名前を変えたのだろうか。

単に、Joyeuが表記しづらい発音だったためジョイにして、その流れで他の名前も日本人になじみのある名前になったのかもしれないが。


参考

Emily Rodda, Deltora Quest. Scholastic Australia
翻訳:岡田好惠、上原梓『デルトラ・クエスト』 株式会社岩崎書店

Deltora Quest Wiki-Wikia

石崎洋司(2004)『デルトラ・クエスト オフィシャル ガイドブック』岩崎書店

Deltora Quest #3: City of the Rats - Emily Rodda - Google ブックス

Deltora Quest #4: The Shifting Sands - Emily Rodda - Google ブックス

Deltora Quest #7: The Valley of the Lost - Emily Rodda - Google ブックス

コメント

このブログの人気の投稿

日本を怒らせる方法コピペ

エルマ族のケムチャ

猫虐待コピペ